AmlethMachina's Headoverheels
ゴシック・ノワールを標榜するAmlethMachinaによる音楽を中心にした備忘録。
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祈りと魔女の叫び
「日常医療に於いて、救急医療体制の欠如はたなに上げ、一番辛い敬意に満ちた環境、むかつくような憐れみと、生きようと努力してもムダだと、はなから彼らの葬式を期待して患者にウソまでついて説得する環境、常に試され、取材され、隔離され、じわじわと拷問され、死または大量殺戮のことのみ考えさせられている環境の中で戦っている人々。」ヴォイス・パフォーマー、ディアマンダ・ギャラスによるHIVポジティブ、AIDS患者の定義である。

あえてシンガーとは呼ぶまい。グランド・オペラで通用するトレーニングを受けてきた経験をフルに駆使し、「精神分裂症を芸術形式に変えてしまった」と言われる純粋表現として彼女は叫び、歌う。独逸表現主義オペラのシュライ(叫び)と呼ばれるパフォーマンス形式の影響下にあるということなのだが、そんな予備知識は不要だ。彼女は正気と狂気の間を自由に行き来し巫女と聖女、魔女の役割を演じていく。そして、語義矛盾のようだが、その表現はアヴァンギャルドという定形すら軽々と飛び越えていく。

86年、兄のフィリップ・ギャラスがAIDSが原因の併発症で亡くなっている。その頃に連作「赤死病の仮面」として「The Devine Punishment」「Saint of the Pit」をリリースする。(第三部もあるのだが、こちらは未聴)葬送と最後の審判をテーマにしたものであるがリリース当時の彼女は「人々が死について否定的とかみなす以前の観念を見据えている。そして、過去でも未来でも幻想でもない、本当の現実を、真実の恐怖を歌っている」と言う。彼女の表現の核には、常に社会の偏見に満ちた差別意識、無知による恐怖との対峙があるのだが、それは単に言語の領域だけではない。彼女の表現形式自体でさえ蒙昧な音楽的形式主義と衝突する。彼女の音源を聴くことは、音楽を聴く行為にすらマスメディアによるバイアスがかかっており、どれだけの差別意識や無知がはびこっているのかを思い知らされることでもある。

以上、つらつら書き連ねてきた訳だが、音源について簡単に触れておきたい。
一番、好きなのは最初に聴いた連作「赤死病の仮面」として作成された「The Devine Punishment」と「Saint of the Pit」のコンピレーション盤。当時のライブパフォーマンスを収録した「PlagueMass」もあるがコンピ盤の方がまとまりがいい。
どうしても怖いのは嫌だというムキには、本人のピアノ弾き語りによるカバーアルバム「The Singer」が楽曲としての骨格を留めているのでとっつき易いかもしれない。といってもマリリン・マンソンより怖い「I put a spell on you」が収録されているが・・・。
コンパクトにまとまった「Vena Cava」,暗黒度数高めの「SchreiX」、ピアノ弾き語りのライブ盤「Preyer and marediction」と色々あって薦めるのにも迷うのだが・・・。
やはり一押しは元ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズとの共作「Sporting Life」。ロック的ダイナミズムと骨格がわかり易いし、ギャラスの魔女の狂乱声が楽しめるので、初めてでも大丈夫。ぜひ、聴いてみていただきたい。

冒頭のギャラスによるAIDS患者の定義。あれは特別な誰かについての物語ではない。無知と差別、偏見、誤情報の生み出した虚構が取り巻く我々の現状なのだ。

*

どーでもいいけど、ギャラスの音源を聞かせた水はどんな結晶を形作るのだろう?

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コメント
この記事へのコメント
えええっ、そんな歌手がいるんですか!?

一度聞いてみたいですね。でも、こわそう。
2008/01/16(水) 14:00:28 | URL | とむ丸 #rZtJR6xo[ 編集]
機会があれば、ぜひ聴いてみてください。
>とむ丸様
もちろん、イージーリスニングを聞きたい方にまで薦めるような性格の音源ではありません。これらの作品は宗教的な性格の主題を含んでいるにも関わらす、耳あたりがいいだけの安直なヒーリングミュージックに癒しを求めるような方からは痛烈な拒絶を喰らうことが目に見えていますので・・・・
しかし、表現に真摯に取り組んでいるアーティストに真正面から向き合いたい方には、一度でいいので聴くことをお薦めします。
2008/01/18(金) 00:30:48 | URL | AmlethMachina #-[ 編集]
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